中学生日記『リング リング』

自分らしく1500メートル走るという課題を与えられた
B組のクラスメイトは各々好きなような走る。
冬馬はひとり、トラックを逆走。
順位というヒエラルキーからの脱出と
好きな奈津美の顔が何度も見えるから。


冬馬がほどほどにかっこ悪くて
しかもなぜかお姉キャラ。
走り方もやりすぎなほど女走りだし
言葉遣いもそれっぽい。
逆走とお姉で濃いキャラしてる。
そういう「個性的」なことをしていると
(自分らしさを出す課題のはずなんだけど)
ムカつく人も出てくるわけで買った反感は
すれ違いざまに足を引っ掛けられて転倒するという結果に。
その怪我のおかげで奈津美と話すきっかけをえた
冬馬は頑張って会話をしようとするのだけど
そうしようとすればするほどお姉な地のキャラが
出てきては冬馬を苦しめる。
矢場先生曰く「走る作文」ということで
クラスメイトの間には様々な思惑がトラックの上で
砂埃をあげて渦巻いていた。
一番になることをだけを目標とする男子。
その男子に勝ってパソコンをもらおうとする女子。
タップしながら、ブレイクしながら、トリプルアクセルしながら
よくわからないけど踊りながら走る男子達。
卓球部の勧誘に余念がない女子。


ああ、感想を書こうとすればするほどあらすじになってしまう。
小学生の読書感想文だ。
ここから、感想を言う、ぞ。
まずB組は芸達者な男子が多くていいですね。
お前将来なにになりたいの?なんていう
二十代も半ば、中学時代から十年を置こうとしている
アダルトな僕でさえもいまだ答えをだせないでいる問いに
彼らはおぼろげではあるけど目標を持っている。
目標というかただの特技なんだけど
タップ上手かったり、ブレイクダンスしたり
二回転くらい回ってみたり
それが直接職業になるかといったらそれはまた別の問題だけど
自分に何かができるということを知っているというのは
強い支えだと思う。
それしかできないからっていう選択肢の狭さは
なんでもできるなんていう可能性という名前の
足かせに比べればトンネルの出口のようにすごく明るく見える。
ま、このダンス三人組はおまけみたいなもんで
冬馬の活躍に目を向けよう。そうしよう。
逆走を妬まれ転倒して膝にわかりやすい穴と
わかりやすい血を流している冬馬と
心配する奈津美。
ともに逆走したりたまにまた時計回りになったりしながら
奈津美とタンデム。
好きな色は?とか聞いてんの。
すげー、楽しそう。
好きな女の子に自分の好意を伝えていく過程にいる14歳。
僕にはなかった過去を僕は今必死に拾い集めてる。
たぶんこれからもそうしてくと思う。