昨日のことで思い出した。


僕の実家は尾張の田舎で、小さな水路が巡らされていて
その間を水田がタイルのように張り付いていた。

町境にある二級河川の土手にある浄水装置、僕らは水門とよんでいた、
ライギョを釣ったりしていた。

浪人中、Mと一緒に水門に行った。
受験生だというのに三分の二はMと遊んでいた。
昼間は釣りをして、夜涼しくなったらスケートして。

いつも釣りをしていた場所がコンクリートで整備され死んでしまって
ほとんど釣れなくなったので、水門に場所を変えてやってきた。

もう太陽は傾いて空の色をぐちゃぐちゃにしていたけど、
まだまだ遊び足りなかったし、水門にはライギョ以外の魅力があった。

草の茂った土手のふもとにエロ本の束が積み重なっていることがあるのだ。
それはもうすでに層となっていて古いものは自然に還っていた。

時折新しい地層が発見されたり、入荷されたりするので
気が向いたときには帰りに水門に寄った。

人家の少なくなる方向へ舵を取り、川沿いにぐんぐん進んだ。

橋の上に自転車を止め、新しいの入荷してるかなとか話して笑った。
Mが電柱に書かれた落書きを見つけて、僕を呼んだ。

その落書きは街にあふれているタグやグラフなんかじゃなくて
目玉のようなものが三つ連なっているもので、僕らは気味悪がった。

そんなことは二秒で忘れてエロ期地層に向かった。
そしたらフェンスにブラジャーがぶら下がっていた。
あとパンツともう一個ブラジャー。
雨にさらされてて薄汚くなっていたし、なんだかおばさんくさい
デザインだったからまったく興奮しなかったし
それどこじゃないと感じていた。

そのときはなんか恐えぇよなってMと話して地層をディグして帰ったけど
後からものすごく恐ろしくなった。
水門に続く路地は田んぼの中にあって、水門以外に出るところがない。
そんな場所に深夜スケートの帰りにワンボックスが走っていくのを見たことがある。
すげぇ気分が悪ぃってMと口々に言い合ったけど、
核心を突く発想はお互い口にしなかった。