僕は大学四年生だ。

就職は決まっていない。
就活をしているとは大きな声で言えない。
正直に話すと六月以降していない。

六月の十六日、エキサイトの説明会前夜、眠れない僕はアルコールのことばかり考えていた。
お酒はあまり飲めないほうだし、あんまり好きじゃない。
飲み会は好きだし、声をかけられれば行くけど酔って何かを乗り越えるのは好きじゃなかった。
辛いことを飲んで忘れたいとかじゃなくて、関係を一足飛びに乗り越えてこられるのが嫌だった。
だから、いつも飲むときは冷静であるようにしていたし、
我を忘れるほど飲んだことは中学三年生のとき以来ない。
十五の大晦日、悪い友達とお神酒を飲んで騒いだときは空に向かって詩人の真似事をしてた。
そのとき以来、飲んで吐いたこともなければ二日酔いもない。
なのにあの晩はアルコールのことが頭から離れなかった。
当然、好きでもない酒が冷蔵庫にあるはずないのだがなぜか一本だけ缶チューハイがあった。
一週間前、サークルの連中と四文屋で飲んだ後、家で二次会をした残りだった。
とにかく今すぐにでも寝ないと明日の朝には間に合わない。
すでに時計は四時近くだった。
諦めだったのか、逃げだったのかよくわからないが冷蔵庫から冷えた缶を取り出して
二酸化炭素の破裂音で静寂の満ちた部屋に亀裂を入れた。
弱くて嫌いなはずなのにすぐに飲み干して体温が上がった身体をもてあました。
一応目覚ましをかけて横になったらいつの間にか陽は高く昇っていた。


僕は一人暮らしだ。
今住んでいるアパートは去年の一月に契約した。
来年の一月には更新するか、それとも解約するかの選択を迫られる。

一月中旬に卒業制作を提出してしまうと大学に顔を出す必要はほとんどなくなる。
一月末にある卒論審査と三月末の卒業式。

ということは一月以降、道も拓けていないのに無理して東京に居座る必要はない。
卒業式のときだけ上京すればいい。

帰郷したら引きこもると思う。
就職活動もしないで、おそらくバイトもすることなく、
両親の庇護の元、爪を噛むように生きていくと思う。

母親との口論の末、物書きになるなんて口走って部屋に閉じこもってオナニーすると思う。
この場合のオナニーは創作活動なんて結局自慰行為じゃないかってことじゃなくて
いつもどおりの射精のことだ。

そうなったら、終わりだと思うんだけど、
どこをさがしてもコンティニューボタンが見つからない。